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23 January 2012

フィクション、寓話、ヴァイオリン。





"フィクションは、愉しまれるためには、見る者の眼に適う真実のようでなければならず、寓話は読む者の信頼を試しすぎてはならない” -- Horace, The Art of Poetry


画像は2台目となるグロテスク・スタイルのはめ込み細工装飾付きヴァイオリン No. 71です。ついに完成し、すでに弾き込まれています。
 この楽器の音は、今月27日にオランダのVoorschotenで行われるコンサートにて聴くことができます。
 ピゼンデル:ヴァイオリン協奏曲 他
  ソリスト 三原朋絵
  指揮 ペーター・ファン・ヘイヘン
  デン・ハーグ王立音楽院オーケストラ




装飾模様から自体は楽器の音に何ら影響を与えませんが、
しかし視覚的に十分なスパイスとなって眼を愉しませてくれます。 
 視覚的アピールの重要性は演奏家からも聴衆からも、吟遊詩人のいた頃から認識されていました。
その頃は現代のような慣習やコンソートの理論とは異なるアイディアで吟遊詩人は自分で自分の楽器を組み立てており、聞き手が音を聞く前から、すでにその見た目で魅了され、想像力がかき立てられるような楽器でした。同じ理由でモンテヴェルディも、イタリアのヴェニスで見つけたアラビアの楽器に大きな興味と関心を抱きました。
その楽器は外見が珍しかっただけでなく、"私たちのハーモニー (byモンテヴェルディ)"にも用いられていたかもしれません。



この楽器に私自身が描いたこの模様細工は、相当な長い期間 広くヨーロッパ中に伝わり根強い人気のあったグロテスクのスタイルに由るものです。



このスタイルは15世紀にイタリアのGrotto(洞窟)で偶然発見されました。その洞窟は妖精、精霊、混種、変成奇形の不気味な生き物、動物と人間の合成体、植物、魚・・・等々、すべて自然から逸脱し、想像を超えるありとあらゆる生物の絵で埋め尽くされていました。この洞窟はDomus Aurea、かつてネロ皇帝(AD64ー68年)の住んでいた黄金の屋敷でした。


発見後すぐから画家達は挙って似たようなデザインを製作し始めます。その結果として、彼らのスタイルは "Grotesque(グロテスク)"と呼ばれるようになり、理論書でも、どのように自然を元としながらも実際にはまだ存在しないような、見るものの想像力を強く働かせる生物を創り上げることができるかが取り上げられています。




模様細工はリュートやガンバではそれほど珍しいものではありません。細工には通常、指板全体を覆いやすい薄いベニヤが用いられます。フレット楽器に普及したのは、フレットの存在がはめ込み細工をほぼ無傷に守ってくれるためです。
フレット楽器でない、また6ー8年ごとに指板表面の補正が必要となるヴァイオリンに装飾を施すのは、かなりのチャレンジです。したがって装飾は滅多に触られない指板の上の方に施してあります。  


いつかは行われる指板の補正は、この装飾部分にも必要となるかもしれません。ですので、補正に耐えられるよう 細工は十分に厚くなければなりません。そのため、はめ込み細工と指板を覆うベニヤは、リュートやガンバに通常施されるものよりも遥かに厚いものとなっています。分厚いこのベニヤを削り出す作業は相当な難業です。あとから削ったラインが見えないよう、まず刃は十分に細くなければなりません。そしてベニヤはぴったり正確な角度で削らなければならないのです。もし少しでも削りすぎてしまうと裂け目ができてしまうし、少しでも削り足らないと後ではめ込むことができません。もちろん、完成してしまえば、どれだけベニヤが厚いものであったかは見ることはできません。が、少なくとも数回程度の指板補正はグロテスク生物の装飾にもたいした脅威とはならないでしょう。  
 このヴァイオリンには一層のニスが塗られ、ほのかにアンティーク仕立て、そして部分的に異なるタイプのニスが加えられています。グロテスク模様と同様に、この楽器自体のモデルも塗装の方法も、17−18世紀ヨーロッパのバロック画家や工芸家たちによる伝統的原則に法っています。  
 駒は黒色ですが黒檀ではありません。なぜ駒(Bridge) が Bridge(橋) と呼ばれるのかを知りたい方は、別の記事(現在英文のみ)をご覧下さい。

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